セミナーのお知らせ (2018.12.5)

【日時】2018年12月5日(水) 16:00〜
【場所】B1206教室

【講師】渡邉 侑子 氏 (山形大学 大学院理工学研究科)

【タイトル】電荷移動錯体TTF-CAの中性相基底状態における量子多体効果

【概要】
テトラチアフルバレン-p-クロラニル(TTF-CA)は,ドナーのTTF分子とアクセプタのCA分子が交互に並んだ擬一次元電荷移動錯体であり,中性-イオン性相転移を示す。温度を低下させると,転移温度81 KにおいてTTFからCAへ電子が一斉に移動し,中性のファンデルワールス結晶からイオン性結晶へと変化する。また,中性相では各分子がほぼ等間隔に並ぶ一方,イオン性相ではスピンパイエルス機構による二量体化歪が現れる。TTF-CAは光照射によっても相転移を示し,イオン性相が強誘電性を示すことから,光スイッチングデバイスへの応用が期待されている。
近年,TTF-CAでは励起光にテラヘルツ光を用いたポンプ-プローブ実験が行われ,テラヘルツ電場によって中性相中の微小なイオン性相ドメインが高速に伸縮振動すると指摘された。イオン性相ドメインの高速振動の微視的理解には,電子相関に加え,非断熱電子-格子相互作用も考慮する必要があるが,従来の理論では取り扱いが困難であった。本研究では,強相関電子系を記述するのに有力な計算手法の1つである共鳴Hartree-Fock法を電子格子系へ拡張し,電子相関と非断熱電子-格子相互作用の両方をバランスよく取り込む理論を構築した。TTF-CAへ応用した結果,中性相基底状態において,微小なイオン性相ドメインや格子の二量体化歪が量子揺らぎとして存在することを見出した。本セミナーでは,これらの量子揺らぎの詳細について議論する。 興味のある方は是非ご参加ください。