凝縮系物理学とは
私たちのまわりの物質は、伝導性・磁性・光学的性質などにおいて多様な性質を示し、その特性を活用して社会生活の基盤となっています。物質は、量子力学に従うミクロな原子・分子が膨大な数(1023個程度)集まって(凝縮して)構成されています。「凝縮系物理学」とは,物質が示す多種多様な性質を量子力学と統計力学を基盤としてミクロなレベルから解き明かす研究分野です。
近年では,特徴ある物性・機能の発現を目指した物質開発の指針が与えられたり,ナノテクノロジーにより肉眼では見えない極微細な系が作られたりしています。このような研究の進展により,質的に新しい物理現象が数多く見いだされているのもこの分野の特徴です。多様な現象とその理解から導かれた基本的な概念は,物理学の分野だけでなく基礎科学全般や応用科学にも大きな影響を与えています。
グループの研究内容
本グループは凝縮系物理学の理論研究グループです。基礎物理学に基づいて物質科学の深い理解とその根底を貫く普遍的な概念の探求をめざして研究を行っています。物質のさまざまな性質は、数多くの原子・分子が凝縮することで生じる、多くの自由度を考慮することではじめて理解されます。新規物質の多様な性質を、ミクロな原子・分子の立場から、理論的に解明・予言することを目指した研究を行っています。
【強相関電子系の理論】
遷移金属化合物や分子性導体では,電子間に働く強い相互作用により,高温超伝導現象をはじめ,さまざまな興味深い電子状態が実現します.伝導電子間に強いクーロン相互作用が働く金属は,強相関電子系と呼ばれます.強相関電子系は、新規物性現象や新機能創発の宝庫です.しかしながら,その理論解析は容易ではありません.私たちの研究室では,K. G. Wilson(1982年ノーベル賞)により開発された「くりこみ群理論」に注目し、その理論を発展させることで,興味深い強相関電子系の解析を可能にしました.場の理論に基づく解析的および数値的理論手法の開発を積極的に行い,数々の強相関電子系における新規物性現象を解明しています.
当研究室へ分属しようとしている学生さんへのメッセージ
4回生時の1年間は,主として固体物理学および統計物理学の基礎(固体電子論,量子伝導理論,多体電子相関とそれらを扱う方法論)をセミナー形式で学習します.卒業研究は,基本的には研究室で取り組んでいる研究へ参加する形で行い,その内容は卒研発表会と卒業論文提出の形でまとめることになります.量子力学と統計力学はしっかりと身につけて下さい.また,3回生後期開講科目の「量子力学3」と「固体量子論」を実質的に受講することを強く希望します.物理が好きで,数学が得意で,自主性をもって学ぶ姿勢のある方を希望します.